平湯太郎さん・髙槻大貴さん・米道卓音さんの共著『エンジニアのAI壁打ち実践術』を献本いただきました。
実は執筆時のレビュアーとして関わらせていただいた本でもあります。せっかくなので、読んだ所感を書いておきます。

Table of Contents
AIエージェント前提の日々で感じていた不安
私もエンジニアの端くれとして仕事をしていますが、育休明けから本格的にAIエージェントで実装することを前提に進むようになりました。
そのなかでずっと引っかかっていたのは、AIエージェント前提で仕事をしていると、自分の、あるいはこれからエンジニアを目指す方の学びや成長の機会を削いでしまわないかという懸念です。
たとえば私は、iOSやAndroidのネイティブアプリを作った経験がWebアプリに比べて多くありません。スキルレベルとしては初心者だと思っています。
それでも、自分が理想だと思うアプリを作って家族で使う、という現実がそこにあります。実際に家族用のアプリを作っていたりします。
驚いたのは、Wear OSの細かなAPI仕様を知らないのに、スマートウォッチと連携するアプリが動いてしまったことです。
音声入力やMaps SDK for Androidの地図を重ねたUXも、自然言語のプロンプトだけで形にできます。
ウォッチ単体でインターネット越しにmBaaSと通信しつつ、一方でData Layer API経由でスマートフォンとも通信する、なんていうことも知識ゼロでできたりします。
つまり、知らなくても作れてしまうわけです。
ただ、知らないまま物事が進んでしまうので、私はおそらく一生「AndroidやiOSのアプリを作れるエンジニアです」と自信を持って名乗れないままなんじゃないか、という気持ちになっています…。
もし同じような悩みを抱えている方がいたら、ぜひこの本を手に取ってもらえればと思います。
AIに使われていないかという問いかけ
本書は序章で、AIに使われている状態になっていないかと最初に投げかけてきます。
AIはうまく使えばとても速く、効率よく仕事が進みます。
一方で、頼っているうちにAIがないと何もできなくなったり、AIが作ってきた成果物を正しく評価できる知識やスキルが人間側に身についていない状態で仕事をこなすことになったりします。
それはAIを使っていく上である程度必然なのかなと思いつつも、使い方次第でその状況は打破できるというのが本書の大きなメッセージだったりします。
たとえば、AIが出してきたアウトプットを鵜呑みにせず、積極的に深掘りの質問を投げてみる実践が書かれていて、 自分が分からないところは、AIと一緒に構造化したうえで1つずつ解きほぐしていく方法が丁寧に書かれています。
他の人に質問されたときに、「ちょっとわからんです…AIが実装したんで…」なんて言うちょっとダサいことを言わなくてすみます。
そして本書がうまいと思ったのは、読んでいくとAIと自分との対話を疑似的に体験できるところです。
構成がとても読みやすいので、プロンプトに自信がない方や、AIエージェントを日頃あまり使っていない方でも、読み進めるうちに問いの立て方や深掘りの仕方が身につくはずです。
実は高度な仕事術の本でもある
本書の著者は3名ですが、実は私の所属している会社の同僚でそれぞれ役割が違います。プロジェクトマネージャー・スクラムマスター、ソフトウェアエンジニア、サービスデザイナーという顔ぶれです。
つまりこの本は、ロールの異なる3名がどうやって仕事を前に進めているのかを、AIという切り口で切り出した本なんですよね。
3名がパフォーマンス高く仕事をしている理由があって、それをAIを使ったらどうなるか、という角度で書かれています。
だから読んでいると、AIの使い方を学んでいるはずなのに、いつの間にか優秀な人の仕事の進め方を読んでいることになります。
考えてみると、壁打ちでやっていることはAIに限定されたテクニックではありません。
前提を疑って、問いを立てて、言語化して、構造化していくことは、仕事ができる人が頭のなかで当たり前にやっていることです。
ただ、それを人間相手にやると相手の時間を奪いますし、そもそも頭の中の作業は他人からは見えません。AI相手だと、その過程がプロンプトと応答という形で全部残ります。
今まで見えなかった優秀な人の思考が、可視化されるわけです。
あと、仕事が速い人はAIに投げる前の整理がうまいんですよね。
なので本書は、すごく実践的なAIの書籍でありながら、実は高度な仕事術を学ぶ機会を作っている本でもあるのかなと思っています。
最後に
『エンジニアのAI壁打ち実践術』は2026年9月10日発売。Amazonでも予約できます。
著者3名とも本当に尊敬しているお三方です。
そんな3名が、AIをうまく仕事のなかで活かしていくという本を書かれるわけです。その話自体がワクワクするものだったので、レビューに参加させていただいたというのもあります。
私もいつかそういうふうに言われるような人間になりたいものですね。

